急展開するシドニー慰安婦像設置問題


Cheers 9月号記事

2016年8月15日


AJCNは5月中旬から、韓国の政治団体挺対協(挺身隊対策協議会)の影響下にある反日韓国人グループ FWCA (Friends of ‘Comfort Women’ in Australia) による慰安婦像設置計画に対する反対活動を行っています。挺対協は、昨年12月28日に日韓両政府で合意したいわゆる”慰安婦問題に関する日韓合意”に反対し、彼らの言う真の解決を主張、一部の元韓国人慰安婦を抱き込んで韓国国内で激しい反対運動を繰り広げ、韓国政府と厳しい対立関係に入っていることは皆さんご承知のことと思います。
海外においても、韓国の反日洗脳教育により、事実をまっすぐ見ることができない視野狭窄に陥っている若い韓国人たちが、欧米で反日韓合意のキャンペーンを展開しています。シドニーでもそれに同期して、水曜デモ、アングレーム漫画展への慰安婦関連作品の展示イベント、反日映画「鬼郷」の上映会などを企画し、実施中です。参加者の多くは最近豪州にやってきた学生やワーホリの若い韓国人達です。

1.慰安婦像お披露目セレモニー

反日グループは、8月6日に慰安婦像を韓人会館に保管するので除幕式を外部で行いたいと、管轄のCanterbury-Bankstown Councilに申請を出しましたが、市は以前よりAJCNと話し合い、この問題の本質を承知していたため、内部で小規模の披露セレモニーを行えと指示しました。実は韓人会館の施設と土地は市からリースしているので、イベント開催と像の設置にはオーナーである市の同意を得ることが必要であり、またコミュニティの平和を重視する立場からこのような通達を出したものです。しかし反日グループは必死の請願を続け、イベント開催の週の初めに市は妥協して多くの条件を付けて、会館横の市所有のネットボールコートと韓人会館建物内部での披露セレモニーの開催を認めました。市は想定外の事件に対応するための積立金(Bond)の確保、短時間の開催、独自で保安要員を雇うこと、横断幕(バナー)の使用禁止、駐車場の使用禁止、ごみの除去等多くの条件が付けました。さらに保管に際しては建物の中とし、韓人会館会員以外の公衆の目に触れないようにすることと通知しました。韓人会館は講堂(Auditorium)を他の人種やオースラリア人に対し誕生会、クリスマスパーティなどのイベント開催用に貸し出しており、対策に苦慮したものと推測します。今回韓人会館を市に無断でまた貸ししていたことも発覚しました。これは市とのリース契約に違反していますのでペナルティが課せられるでしょう。

披露セレモニーが終了すると、慰安婦像は韓人会館内に搬入されることなく、そのままクレーンで吊り上げられトラックに載せられ、AshfieldのUniting Churchの敷地内に搬入されました。もともと慰安婦像のキット(青銅の像、ベースの石板、2つの黒色石製銘版、移動用車輪内臓の白木製台車が一体となっている)は大きく重いため、建物内への持ち込みは不可能と判断したものと思われます。

セレモニーイントロ 韓国音楽の演奏
挨拶する活動家ハルモニ(元・慰安婦)キル・ウオノク

来賓席:前列左から ビル・クルーズ牧師、キル・ウオノク、イ・ジェミョン城南市長、連邦下院議員リンダ・バーニー、後列左 挺対協ユン・ミヒャン代表

参加者約150名


2.慰安婦像は教会へ持ち込まれたが、危険場所に仮置き状態

Ashfieldの教会への持ち込みはBill Crews牧師が受け入れを表明しており、造園工事の完了を待って1年後に移設と反日グループは語っていました。それが8月6日に急きょ変更になったのは以上のような事情があったものと推察されます。
教会敷地はUniting Church in Australia Property Trust (NSW) 所有の私有地ですが、豪州の反差別法ではpublic space(公共空間)とみなされます。つまり電車やバス内と同じ扱いです。ですから私有地だからと言って何を建ててもいいというわけにはいきません。AJCNは教会管轄担当のInner West Councilに多くの情報を提供して、慰安婦像問題に関する懸念を伝えてきました。今回、教会は市の介入を恐れ、市に設置許可申請を出さず無断で教会の裏手にある、教会および慈善団体のための専用駐車場の奥に置くことにしました。

この駐車場には一般人も入れますが、普通の人間が道路や広場を歩くようにはいきません。裏道への通り抜けはできず、また裏道から入るゲートには電子開錠装置が設置されているため、一般車両と人は入れません。表の教会側からは鉄製の2つのゲートを通って入るので、ここを通って入るのは教会、慈善団体関係者か、その事務所に用事がある人くらいのものです。これらのゲートは施錠されていませんので、ビル牧師は慰安婦像を教会に設置し皆が見られるようにしたと言い張るのでしょう。韓国メディアは慰安婦像が教会の前庭に設置されたと報じており、韓国国内の韓国人はそれを信じています。

さらに認識する必要があるのは、ここがただの駐車場ではなく、毎日の炊き出し運搬用バンや荷物トラック、そして荷物の積み下ろしをするフォークリフトが走り回り、慈善団体のスタッフが働いている作業場所だということです。ですから安全のために「ここを人が通れ」という通行区画を示すサインが黄色のペンキで駐車場の周囲の地面に塗られています。慰安婦像キットは今このサインの上にはみ出して、人の安全な歩行を妨害しています。

反日グループは、8月6日のセレモニーで何度もAJCNの名前を出して我々の活動を日本政府のバックアップを得て行っていると非難しました。彼らは現実の悲惨な像設置現場を見て、今度はキャンベラ国立戦争博物館に展示すべく活動すると息巻いています。AJCNはこの設置計画を阻止するとともに、仮置きされている像の撤去に向けて教会側との交渉を開始します。

ビル牧師は昨年6月に、中国の人権活動家をサポートする目的で天安門事件を追悼するために製作された「自由の女神像」(中国系米国人の彫刻家がデザイン)を、今回の慰安婦像が置かれた場所に受け入れていました。この女神像は、その作られた目的が書かれた銘版も剥がされたまま、慰安婦像の脇に押しやられています。ビル牧師は中国共産党の迫害に抵抗し言論の自由を要求する中国人活動家をサポートしながら、中国共産党がバックから支援する慰安婦像設置活動をもサポートしていることになります。Uniting Church Australiaは子供たちに対する性的虐待問題で訴えられ、2013年に被害者たちに二百万ドルの賠償金を支払っており、この教会の体質が垣間見えます。

3.今までの活動の成果

我々のメンバーの80%は女性で母親ばかりで、そして彼女達の夫のオージーが家族を守るためにAJCNに加わっています。メンバーの粘り強い努力によって、今回の2つの市の対応を引き出すことができました。ストラスフィールド市での否決により、公的な空間への慰安婦像設置が困難であるとの認識が定着し、像は公衆の目から遠ざけるべきという行政の判断が一般化しています。反日グループが取りうる方策はもう個人の住宅のバックヤードに設置することくらいしか残されていないのかもしれません。

なお8月6日のセレモニーにおいて、反日グループは市から指定された条件のうち横断幕の使用禁止と駐車場使用禁止を無視しました。北朝鮮と関係の深い挺対協の目的は日韓合意つぶしと日韓豪米の政治的離反です。多くの韓国メディアを呼んで「慰安婦像が初めてシドニーに設置された!」と記事にしてもらい、彼らの韓国での寄付金ビジネスの延命を図るという目的は達成されるかもしれませんが、韓国の異常さをオーストラリア人に認知させてしまったのは、像設置に反対した1/3の良識ある韓人会会員や韓人会に入会していないマジョリティの韓国人にとって大きな痛手となったのではないでしょうか。ちなみに、今回来豪した挺対協のYun Mi-Hyang代表の夫は1993年に北朝鮮のスパイ容疑で逮捕されています。慰安婦像は極めて政治的なオブジェクトであり、平和や女性の人権とは全く関係ありません。真に問題の解決を望むなら、日韓合意を妨害したりはしないでしょう。AJCNは2度に渡って豪州メディア向けのプレスリリースを発表し、戦争で苦難を味わった女性への追悼は大切だが、政治的に利用するのは間違っていると主張しています。(AJCN事務局長 江川純世)


裏道から見た教会・慈善団体専用駐車場

駐車場奥に置かれた像、右は食料倉庫

歩行者用通行区画にはみ出した慰安像キット

像搬入日にはしゃぐビル牧師

慰安婦像と右に置かれた自由の女神像、その右は食料用大型冷凍冷蔵小屋

週日の車、トラック、フォークリフトが走り回る駐車場、像の前はフォークリフト置き場

たき出し配送用バンと食料輸送トラック、炊き出しは1,000食/日

教会側から駐車場への入り口ゲート

英語碑文